家を出た娘の手紙には、あるライダーへの思いが綴られていた。しかし、そのライダーは独身のままだった。
状況記録
探偵事務所に、一人の母親が駆け込んできた。大学生の娘・理沙が、机の上に手紙を残して、家を出てしまったという。手紙は、こう書かれていた。
お母さん、ごめんなさい。私が応援していたのは、山道を一気に下っていくあの人です。一目会いたくて、はるばる北の山までバスを乗り継いだこともありました。声をかけてもらえた日は、人生でいちばん嬉しい日でした。それなのに昨日、あの人が結婚したと知りました。お相手は有名なアイドルだそうです。ネットの記事で読みました。祝福しなければいけないのに、ここにはもういられません。出かける前に、お気に入りの映像をもう一度だけ見ます。『鷹森昂太のダウンヒル・ライド』。砂利を弾く音、荒い呼吸、ペダルをこぐ音、曲がる直前の「いくぞ」の声。やっぱり、あの人はすごい。さようなら。
探偵は映像を確認し、母親に言った。「鷹森昂太は、独身ですよ。結婚の話も出ていません」
「それなら、この手紙は、いったい誰のことを書いているのですか?」
手紙が示している真実として、最も正しいものはどれでしょう?
証拠品
置き手紙理沙の筆跡。「あの人の結婚式があった」と書かれている。 E-2
映像『ダウンヒル・ライド』息づかい、ペダルの音、砂利を弾く音まで聞こえる。鷹森昂太のプロフィール独身。結婚の予定も発表されていない。
現場図面
図面
時系列
- 理沙が「あの人が結婚した」とネットで知る。
- 理沙が手紙を残して家を出る。
- 母親が探偵事務所を訪れる。
- 探偵が映像を確認し、鷹森が独身だと確かめる。
ヒント
行き詰まったら、一つずつ開封してください。
ヒント1を開封する
鷹森が独身なら、手紙の「あの人」は鷹森ではありません。では誰でしょう?
ヒント2を開封する
映像から聞こえる音に注目してください。どんな距離で録音しないと、聞こえない音でしょう。
ヒント3を開封する
その距離で、同じ速度の山道を走れるのは、どんな人でしょうか。
推理する
真相に最も近いものを選んでください。
解決真相
理沙が愛していたのは、映像を撮影した人だった
答えは「理沙が愛していたのは、映像を撮影した人だった」です。
手紙には、息づかい、ペダルの音、カーブ前の掛け声が、はっきり聞こえる映像だと書かれています。遠くからカメラで撮ったり、空撮したりしても、こうした音は拾えません。撮影者は、鷹森のすぐ横を、同じ速度で走っていたのです。
それは、鷹森に並ぶほどの腕を持ったライダーだということです。理沙が愛したのは、鷹森ではなく、その映像を撮ったライダー(手紙の「あの人」)でした。結婚したのも、その人です。
解説図
推理ポイント
- 手紙の内容と、確かめられた事実の食い違いを見つける
- 「見えている音」から、撮影者の位置を逆算する
- 映像を撮る人は、画面に映らないことに気づく
なぜ騙されるのか
手紙を最初から最後まで鷹森への思いとして読んでしまうため、「あの人」が別の人かもしれないという視点が出にくいのです。撮影者は映像に映らないので、存在を忘れがちです。
類似トリック
- 画面に映らない人物が真相のカギになるタイプ
- 物の音や距離から、状況を逆算する推理
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